ツィメルマンリサイタル・びわ湖ホール [ピアノ]
ショパン生誕200年記念ツアーとして
世界縦断ショパンリサイタル2010を展開している
ツィメルマン・びわ湖ホールでの演奏会を聴きました
自ら丹念に調律調整した 自分の楽器で奏でる こだわりの世界
ノクターン 嬰ヘ長調 はじめの一音が
水面に落ちる雨の滴のように 幾重にも広がっていきます・・・
前から6列目で ツィメルマンのけん盤を愛撫するようなタッチと
優しく深いブレスを感じながら
包み込まれるようにして 響きの渦に吸い込まれました
CD録音では 収録してもすぐ出さず 3年あまり寝かせて温めて
再度聴いて納得できるなら リリースするというエピソードもあるほど
自分の音楽に対する厳しさでも 世界最高峰のピアニストです
ソナタ2番“葬送” では 一糸乱れぬ緊張感で
ショパンの激動の人生を ショパンになり代わって奏でているよう
ルービンシュタインが 「死の詩」と評したように
葬送行進曲では 鐘を鳴らすように かなり重いテンポで
ppppp から fffff まで 最大限にピアノという楽器を響かせ
終楽章は 死者の魂が風に吹かれて葬られていくような
当時のポーランドの悲劇を 再現しているような
ポーランド人ならではの 想像を遥かに超えた壮絶なソナタでした
スケルツォ2番は 青年時代のショパンとマリアとのロマンスを彷彿とさせ
軽妙なタッチで爽やかに鮮やかに繰り広げ
演奏後のツィメルマンの笑顔が青年のように印象的でした
休憩タイム。。。
舞台にはツィメルマン愛用の楽器と
少し傾斜のついた特注の椅子に注目が集まります
ヨガでも お尻の下にバスタオルを敷くと座るのが楽になるから
楽器と椅子 演奏法を工学的に研究しているのだろうなあと。。。
後半の ソナタ3番 は圧巻
1楽章を聴けただけで 今日は来て良かったなあ・・・と
胸がいっぱいになりました
ツィメルマン自身 当分ショパンは弾かないだろうと言っているくらい
今回のショパンソナタプログラムは 何かに到達した境地を
天国のショパンに語りかけているような空気が漂っていました
プログラムラストは 大好きな 舟歌
涙が出そうになるほど 美しいピアニズム
感情に溺れない 知的なツィメルマンの演奏が
常に聴覚や頭脳に刺激を与えてくれるので
次はどんな音が出るのだろうかと アナリーゼが面白く
最後の音まで こころを離さない生涯心に残るリサイタルでした
舟歌の後は なにもいらない・・・
それが ショパンのすべて・・・
このまま帰りたい・・・と拍手を送っていたら
両手を胸に当てて あたたかい微笑みで ステージを後にされました
素晴らしい芸術家 人間性あふれる演奏に たくさんの感銘を受け
夕空に浮かぶひこうき雲を眺めながら 家路につきました
東京公演はまた何か違うだろうなあ。。。聴きに来たいなあ。。。
数日余韻が残って 放心状態でした
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